マサラダ

【歌詞考察】マサラダ『イレギュラーマン』|ズレたまま始まるために――逸脱を肯定する歌

マサラダの『イレギュラーマン』は、「普通に生きること」ができない者のための歌だ。真っ直ぐ歩けないまま、傷だらけで転がり続ける語り手が、最後には「逸脱する者=イレギュラーマン」として名乗りを上げる。歪んだまま始まるその生き方に、敗北ではない尊厳が宿っている。この歌詞考察では、逸脱・ズレ・不適合といったテーマを軸に、「自らを肯定できないすべての人」に向けて、静かな共鳴を描き出す。
カンザキイオリ

【歌詞考察】カンザキイオリ『あんたは死んだ』喪失が語り手を壊し、世界の意味を奪うとき

カンザキイオリの『あんたは死んだ』は、ある他者の死をきっかけに、語り手が自己と世界の輪郭を失っていく過程を描いた凄絶な作品である。本記事では、「愛すること」と「喪うこと」のあいだに生まれる自己崩壊の運動をたどりつつ、残された語りの果てに浮かぶ「愛」という名の仮説を丁寧に読み解く。
DECO*27

【歌詞考察】DECO*27『弱虫モンブラン』“本当”が信じられない夜に

愛した記憶が消えていく。「本当」の感情が信じられなくなる。DECO*27の『弱虫モンブラン』は、そんな“感情の不確かさ”に揺れる私たちの心に鋭く触れる。自己喪失、矛盾する言葉、そして愛という名の契約——甘くて脆い「弱さ」の奥に宿る、もう一つの強さを掘り起こす。
LOL

【歌詞考察】LOL『レビテト』承認と毒の倫理

LOLの楽曲『レビテト』は、承認への飢えとそれを否認する毒の言葉が交錯する、現代的な自己愛の歌だ。「鏡」「数字」「幻想」を通じて生を確かめる語り手の姿を読み解くことで、欺瞞に満ちた感情のリアルが立ち上がる。本稿では、人格モード批評スタイルに基づき、彼女の中にある“生きたい”という声を静かに拾い上げていく。
しゃいと

【歌詞考察】しゃいと『聖人君子でありたい』―善性と暴力の間に立ち尽くす者たちへ

「良い子」であることは祝福か、それとも呪いか──しゃいとの楽曲『聖人君子でありたい』は、現代社会における“理想的な人格”の押しつけと、その背後に潜む暴力性を鋭く描き出す。笑顔を仮面にして生きることの代償、その静かな降参を読み解く。
ryo

【歌詞考察】ryo『罪の名前』――罪と呼ばれた私へ

「化け物」と呼ばれた少女にとって、世界は“生きているだけで罪”とされる場所だった。ryoの楽曲《罪の名前》は、差別、贈与、そして実存的肯定を通して、“呪い”と呼ばれた名を他者との関係の中で言い換える物語である。本記事では、歌詞の核心にある「見られることの痛み」と「語られることの希望」を三つの批評視点から読み解く。
cosMo(暴走P)

【歌詞考察】cosMo(暴走P)『ディストピア・ジパング』未来なき時代の倫理

夢も希望も奪われた時代に、人は何のために生きるのか。cosMo(暴走P)による『ディストピア・ジパング』は、閉塞と喪失のなかに微かに灯る「寄り添い」の倫理を描き出す。本稿では、未来を持たない世代の実存に光を当てつつ、変革なき時代における連帯のかたちを丁寧に読み解く。
ぬゆり

【歌詞考察】ぬゆり『ロウワー』言えなかった気持ちの祈りと、壊れそうな繋がりのかたち

言いたかったことを飲み込み、守りたかったものを胸に沈める。ぬゆりの『ロウワー』は、すれ違いや断絶を前提としながらも、それでも繋がりたいと祈る語り手の姿を描き出す。言葉にならない感情の澱を抱えて、壊れないために願い続ける、静かで切実な記録。
柊キライ

【歌詞考察】柊キライ『ボッカデラベリタ』不在の愛と依存の構造

柊キライ『ボッカデラベリタ』は、「君がいなけりゃあたしは無い」と語る語り手の声を通じて、他者への過剰な依存と、自我の不安定さをあらわにする。恋愛の名のもとに壊れていく関係と自己の輪郭を、意味の崩壊とともに浮かび上がらせる歌詞を考察する。
kemu

【歌詞考察】kemu『六兆年と一夜物語』「知らない」と繰り返す声は、何を知っていたのか

kemu『六兆年と一夜物語』は、「知らない」と繰り返す語り手の矛盾に満ちた言葉が印象的な楽曲である。語る力を奪われた存在が、それでもなお言葉を紡ごうとする姿は、聴く者に痛切な共感を呼び起こす。この記事では、繰り返される表現の中に秘められた感情の構造と、語り手が経験したかすかな関係性のゆらぎを丁寧に読み解いていく。